CBTとは?試験や検定、公教育への導入メリットとこれからの課題
資格試験や検定などの実施方式として、「CBT」という言葉を最近目や耳にすることが増えた人も多いのではないでしょうか。CBTとは、従来の紙と鉛筆を使ったペーパーテストに対し、パソコンやタブレットなどのコンピューターを使って試験を行う方式です。
ここでは、CBTの基礎知識から、日本での導入が進められている背景のほか、実施のメリットと課題まで解説します。
CBTの概要
まずは、CBTとは何か、その概要について確認しておきましょう。これまで、一般的に行われてきた試験方式は、PBT(Paper Based Testing)と呼ばれる、紙と鉛筆で行うものでした。対してCBTは、紙と鉛筆を使わずにコンピューター上で行う試験方式であり、Computer Based Testingの略称です。
CBTは、試験の申込みから受験、採点、合否通知までを一貫してコンピューター上で行うことができ、実施側と受験者側の双方に多くのメリットがあることから、近年広く普及し始めています。
なお、これまでPBTの場合、台風や地震などの天災によって試験が延期や中止になった際の影響が課題でした。問題用紙やマークシートの準備、受験者全員の振替対応にかなりの時間と労力がかかるからです。その点、CBTの場合は、受験者自身で試験日や試験会場の変更、キャンセルをすることも可能で、日程の振替もスムーズです。日本は災害大国と呼ばれるだけに、不測の事態に備えられるCBTの強みは高く評価されています。
CBTを取り巻く日本と世界の環境
現在国内では、日本漢字能力検定や実用英語技能検定といった検定試験のほか、企業の採用試験、大学入試、eラーニング後の実力試験などにCBTが採用されています。また、大学入学共通テストでの活用も検討されるようになりました。
しかし、日本の試験方式の主流は、今なおPBTです。これは、国際的に見て後れをとっていると言わざるを得ません。
国際的にはCBTが主流になっている
世界に目を向けると、多くの国の教育、医療、IT、企業などの資格試験や採用試験などがCBTで実施されています。国際数学・理科教育動向調査でも、2019年から調査形式がPBTとCBTの2通りとなり、日本がPBTで参加する一方で、成績上位国の多くはCBTを選択しました。
国際的な学習到達度に関する調査(PISA)も、2015年から全面的にCBTに移行しており、日本の成績の低下とCBTへの習熟度不足との関連が指摘されています。
2024年度から全国学力テストに順次CBTを導入
日本のこうした状況を背景として、文部科学省は、全国の小学6年生と中学3年生全員を対象に実施する全国学力・学習状況調査(全国学力テスト)を、2024年度からCBT化する方向で調整しています。 実際に、2021年度から約100校を対象に全国学力テストのCBTの試行・検証を開始しており、中学校から先行して行った上で、2024年度以降、できる限りすみやかに順次導入すると提言されました。
さらに、文部科学省では、児童と教員をつなぐ教育向け学習管理システム「学習eポータル」を拠点とし、学校・家庭で学習や評価ができるCBTシステムの「MEXCBT(メクビット)」のプロトタイプを開発。システムの機能の改善や拡充を経て、2021年11月下旬より協力する自治体へと提供しています。学習eポータルとMEXCBTの利用拡大を推進する背景より、2024年度以降の全国学力・学習状況調査はMEXCBTで実施される可能性が高いともいわれており、各自治体の動向に注目が集まっているのです。
CBTのメリット
ここからは、CBTを採用するメリットについて、実施側と受験者側の双方から見ていきましょう。
<実施側のメリット>
・受験者ごとに異なる出題が可能で、不正行為対策ができる
CBTは、出題順を変えたり、試験問題そのものを受験生ごとに変えたりと、自由にカスタマイズすることが可能です。そのため、カンニングや試験問題漏洩といった不正行為の心配が、従来のPBTと比べて少なくなります。
・文章以外の形式での出題が可能
文章や図表だけでなく、動画、画像、音声などを利用することで、従来の型にとらわれない多様な問題を出すことができます。発想力や思考力を問う問題などで、受験者の能力をさまざまな角度から問うことができるでしょう。
・用紙の管理や会場確保の手間やコストを抑えられる
CBTの試験問題は、設定されたパソコンやタブレット上に表示されます。実施側にとっては、紙を使わないので、問題用紙や解答用紙の印刷、管理、配布といった手間もかかりません。
・採点や集計の効率化
受験者の手書きの解答を判読して採点する作業は、かなりの時間を要します。CBTは記述式問題でもキーボード入力なので、解答内容の把握に時間がかかりません。また、選択式の問題は自動採点のため、集計も容易です。
<受験者側のメリット>
・結果が短期間でわかる
採点や集計にかかる時間が少ないため、短期間で結果がわかることが一般的です。試験や検定によっては、終了後にすぐ結果が判明する場合もあるでしょう。
・書き直しが容易にできる
紙の解答用紙では、誤答に気づいたときの書き直しに時間がかかりますが、CBTはキー操作のみですぐに書き直しが完了します。試験終了時間が迫っているときでも、時間を有効に使うことが可能です。
・筆記用具の準備がいらない
CBTは、パソコンやタブレットなどの端末に入力する形式のため、試験会場に筆記用具を持っていく必要がありません。少ない荷物で身軽にテストを受けることが可能です。
CBTとIBT、WBTの違い
CBTとPBTの違いについては冒頭でふれましたが、よく似た言葉にIBTとWBTがあります。これらの違いについても確認しておきましょう。
IBT(Internet Based Testing)
IBTは、コンピューターを使ってインターネット経由で受験する試験形式のことです。受験者は、自身のパソコンやタブレット、モバイル端末から、学校や会社、自宅など、インターネット環境があるあらゆる場所から受験することができます。
受験者数の制限もなく、思い立ったらすぐに受けられる反面、不正防止対策は厳格とはいえません。会社や学校といった、監督者がいる場合を除いては、カンニングやなりすましによる不正受験の可能性もないとはいえず、公的な試験にはあまり向いていません。
WBT(Web Based Training )
WBTは、eラーニングなどに代表される、ウェブのベースのシステムを使って学習や教育を行う手法のことです。従来はCDやDVDを配布して行われてきましたが、現在は主にクラウドサービスが普及しています。
CBTの課題
メリットも多く、日本国内で導入が進む動きを見せているCBTですが、今後の拡大にあたってはいくつか課題もあります。
大規模かつ一斉実施の場合の端末確保が難しい
大学受験のように、大量の受験者が一斉に取り組む試験の場合、受験者一人ひとりに十分な機能を備えたパソコンやタブレットを用意する必要があります。実施する大学側にとっては、試験日以外の期間の端末保管コストや、保管中の保守点検にかかるコストをどうするかといった点も考えなくてはなりません。
端末の操作技術やインターネット環境によって成績差が出る可能性がある
普段から端末操作に慣れている受験者と、そうでない受験者のあいだで、試験結果に差が出る可能性も考えられます。また、インターネット環境によって、端末の動きがスムーズではないなどの、予期せぬトラブルが起こることもあるでしょう。
解答結果の外部流出の懸念がある
問題や解答を電子データとして送受信する過程で、外部流出する懸念はゼロではありません。セキュリティをどう高めるかは、CBT普及の大きな課題です。
公教育への導入が進むCBT
学習塾や教育コンテンツを展開する総合教育企業である株式会社スプリックスでは、1人1台の端末を活用したCBTプロダクトを開発して、近い将来のCBT化への備えを強化する公教育への導入を推進しています。 ここでは、CBTプロダクトを学校向けにパッケージ化した「SPRIX CBT」について、それぞれのプロダクトの特徴をご紹介いたします。
TOFAS
TOFASとは、教員とAIのハイブリッド指導で基礎学力の定着を目指す「フォレスタ学習道場」や、オンライン個別指導の「そら塾」で培った知見をもとに、計算、漢字・語い、英単語の基礎学力を正しく評価するシステムです。
基礎学力にフォーカスしているのは、これまで指導してきた子供たちの失点の理由が、基本的な足し算、引き算、掛け算、割り算といった四則演算や英単語などのスペルミスにあることがわかっているからです。TOFASによって欠けている基礎知識の定着を図り、点数アップを目指します。
ウェブベースのテストシステムであることから、日本国内だけでなく世界複数国で実施しており、グローバルレベルでの基礎学力の比較も可能です。
単元別テスト
単元別テストとは、学校現場の声をもとに開発した、主要教科の単元別テストのことです。 教材開発のノウハウと、TOFASで構築したテストシステムのプラットフォームを融合させたCBTシステムを構築。子供たちの知識の定着度を確認しながら、つまずきのポイントを可視化します。
プログラミング能力検定
プログラミング能力検定は、プログラミング概念の理解度を体系的に分析・評価するテストです。小学校でのプログラミング教育必修化を受けて、サイバーエージェント社と共同開発しました。学習成果を証明するとともに、その後の効果的な学習につなげることが期待できます。
スプリックスのCBTプロダクト「SPRIX CBT」の導入事例
文部科学省が提唱した、全国の小・中学校の児童・生徒に1人1台端末の支給と、全国の学校に高速大容量の通信ネットワークを整備する「GIGAスクール構想」。
この構想にもとづき、実際に1人1台端末を早期に実現させている公立小学校で、「SPRIX CBT」をテスト導入した際の事例をご紹介しましょう。
東京都港区の場合
東京都の港区教育委員会の協力のもと、港区内12の小・中学校でTOFASを実施しました。実施後、先生方からは、「URLにアクセスしてボタンを押すだけで実施でき、非常に利便性が高い」「紙のテストより集中できたという生徒が多く、実際に見ていても集中力が持続していると感じた」といった感想が聞かれました。
<導入した学校の声>
・大人が思う以上に子供はタブレットの操作に慣れていて、新たな試験形式への順応性も高い
・「タブレットで遊んでしまうのでは?」と思ったが、サクサクと問題が出てくることもあって非常に集中していた
・子供のつまずきを結果表で可視化でき、個別指導に活かせるのが良い
・質の良いアウトプットをするために欠かせない、基礎学力を鍛えられるメリットが大き
・蓄積された結果データを指導の振り返りや今後の指導に活かせる
教育現場の負担軽減にもCBTは有効
世界的な状況に鑑みても、国内のテスト環境は今後、着実にCBTに移行していくと考えられます。 マルチタスクに追われる先生方の負担を軽減し、より細やかな指導を実現するためにも、基礎学力を担うTOFASをはじめとするCBTプロダクトの活用が有効です。CBTの導入をお考えの際には、株式会社スプリックスにお気軽にご相談ください。