小学校におけるICT教育の現在とは?ICT活用事例についても紹介
文部科学省は、2020年の小学校学習指導要領改訂に際し、教育の情報化の進展に向けた参考として「教育の情報化に関する手引」を作成しました。これは、授業の中ではもちろん、公務を含めた学校生活全体のデジタル化が進む中、教員や生徒にその指針を示すものです。今後、急速に導入が進むICT教育は、どのように小学校の教育現場で活かされていくのでしょうか。
ここでは、自治体独自の取り組みも注目されている小学校のICT教育の現状について、小・中学校での導入事例を交えながらご紹介します。
ICT教育とは?
デジタル技術でライフスタイルやビジネススタイルに変革をもたらす「DX(デジタルトランスフォーメーション)」が注目されるようになり、国もさまざまな施策を進めています。そのひとつが、教育分野におけるDXともいえる「教育のICT化」です。 とは、Information and Communication Technologyの略で、ICT教育とは情報通信技術を駆使した教育現場での取り組みの総称として使われています。
なお、文部科学省が2011年に公表した「教育の情報化ビジョン」では、「目指すべき次世代の学校・教育現場」像として、下記の5つを挙げています。
<目指すべき次世代の学校・教育現場像>
・学びにおける時間・距離などの制約を取り払う
・個別に最適で効果的な学びや支援
・プロジェクト型学習を通じて創造性をはぐくむ
・校務の効率化
・学びの知見の共有や生成
では、具体的には、どのような授業がICT教育にあたるのでしょうか。
<ICT教育を活用した授業の例>
・紙の教科書の代わりに、パソコンやタブレットで電子教科書を使用する
・ICT機器を使って図形を拡大したり、立体的に見せたりして、生徒の理解を深める
・授業に動画を取り入れ、わかりやすく説明する
・生徒がデジタルコンテンツを活用して疑問点を調べる
・生徒一人ひとりの理解度やつまずきの状況に応じて、デジタルコンテンツで課題を与える
こうした取り組みは、文部科学省が提唱した全国の小・中学校の児童・生徒に1人1台の端末の支給と、全国の学校に高速大容量の通信ネットワークを整備する「GIGAスクール構想」にもとづき、2023年度末を目指して、創造性をはぐくむ教育ICT環境の実現が進められてきました。 しかし、2020年には新型コロナウイルスの感染拡大の影響で全国一斉休校になったことから、対面での授業が再開された際に、この計画は前倒しされました。
小学校のICT教育のポイント
小学校でのICT教育は、どのような点がポイントになるのでしょうか。カギとなるのは下記の3つです。
学校生活全体にICT機器を取り入れる
ICT教育の本来の目的は、情報化社会に柔軟に対応し、適切に情報を活用できる人材を育成することです。小学校におけるICT教育では、プログラミング学習のスタートや、1人1台の端末の支給が進められてきましたが、これらはICT機器をツールとして活用した取り組みの一部に過ぎません。 今後は、デジタル教科書や教材の導入、カメラ・マイクの整備など学校生活全体にICT機器を取り入れ、あらゆるシーンでこれらを活用することによって、「ツールをどう使うか」ではなく「何のためにツールを使うか」「ツールを使って何ができるか」を考えていくべきでしょう。
例えば、連絡帳や電話でやりとりされている欠席の連絡や、プリントで配られる宿題や連絡なども、ICT機器を活用することでよりスピーディーに、より簡単に行うことができ、人的ミスの削減や業務効率化、ひいては教員の労働時間削減などにつながります。
ICT機器にふれ、ITリテラシーを身につけさせる
ウェブ上にあふれる膨大な情報には、デマや不確かな情報も数多く含まれています。情報化社会においては、こうした中から必要かつ正確な情報だけを選択し、適切な方法で活用する情報活用能力が不可欠です。 小学生のうちからICT機器にふれ、情報を取捨選択する方法や、活用の仕方について実践を通して学ぶことで、将来の基盤となるITリテラシーを子供たちに身につけさせることができます。
ICTを利用して、アクティブラーニングを実現する
日本の学校教育では、教員が生徒の前に立って講義をする一方向型の指導が長く採用されてきました。生徒は常に受け身で、促されたときに質問をし、教えられたことを暗記するスタイルです。
しかし、情報や知識が日々ブラッシュアップされる現代においては、課題の発見と解決を主体的に行う力が求められています。そこで、文部科学省が推奨しているのが「アクティブラーニング」です。アクティブラーニングとは、従来の暗記型教育を脱し、さまざまな情報源から生徒が主体的に学びを深めていく学習手法のことを指します。
ICT機器を活用することで、ウェブ上の情報源を活用できるほか、動画やスライドなど、より良いアウトプットとその共有がスムーズにでき、アクティブラーニングの実践につながります。
小・中学校におけるICT教育事例
国内では、新型コロナウイルス感染症の感染拡大に伴う休校を受けて、GIGAスクール構想が前倒しで進められ、公立校でも1人1台の端末の導入が進みました。 さらに、大学入学共通テストへの導入が検討されて注目を集めているCBT(Computer Based Testing)を見越して、自治体主導でICT教育を展開する例も増えてきています。CBTとは、パソコンやタブレットを用いて、機器上で行われる試験全般のこと。試験の実施から採点、結果の伝達までの一連の流れを、ICTを活用して行います。
学習塾や教育コンテンツを展開する総合教育企業である株式会社スプリックスでは、こうした動きにいち早く対応するため、自社でCBTプロダクトを開発。1人1台の端末を活用して、近い将来のCBT化に備える公教育への導入を推進しています。 ここからは、実際に3つのCBTプロダクトを学校向けにパッケージ化した「SPRIX CBT」を活用した、小学校の事例をご紹介しましょう。
東京都港区の場合
ほかの市区町村に先駆けて1人1台の端末を実現した東京都港区では、端末を利用する取り組みとして、また近い将来の一般化が予想されるCBTへの備えとして、スプリックスが提供するCBTプロダクトの「TOFAS」を港区内12の小・中学校で導入しました。
TOFASは、基礎学力にフォーカスしたCBTです。スプリックスが20年以上にわたる学習塾運営と教育コンテンツ制作を通じて得たノウハウと、教員とAIのハイブリッド指導で基礎学力の定着を目指す「DOJO」、オンライン個別指導の「そら塾」で培った知見を活かして、計算、漢字・語い、英単語の基礎学力を正しく評価するテストとして開発しました。
港区教育委員会によると、「学校教育推進計画における施策のひとつとして『確かな学力の育成』を掲げ、その具体的な方策として基礎学力の習得に重きを置いていたことから、基礎学力をCBTで評価するTOFASに興味を持ちました。基礎学力の定着に必要な伸びしろを可視化できることや、海外10ヵ国以上の子供たちとの比較ができることも、決め手のひとつになった」と話します。
<先生方の声>
・導入にあたって現場のハードルが低い
TOFASは、子供たちがそれぞれの端末からURLにアクセスし、ボタンを押すだけで受験が可能です。面倒な設定やサポートが必要なく、教員側の負担がありません。端末とインターネット環境さえあれば、スムーズに実施することができました。
・つまずきが可視化できる
子供がテストでつまずくポイントは、一人ひとり異なります。基礎学力となると、かなり前の学習段階にさかのぼらなければならず、把握が困難でした。TOFASの結果表を使うと、子供のつまずきを可視化できるので、個別に最適な指導を行うことができます。
・子供の集中力が持続する
次々に問題が出てくるので、子供たちの気が散らないこともCBTならではのメリットです。紙のテストよりも集中力が続くことも珍しくありません。
ICT教育の先駆けとして、CBTでの基礎学力定着を目指そう
教育のICT化が進む中、今後は小学校のテストも順次CBTに置き換わっていくと考えられます。TOFASは、いち早くCBTに親しみつつ、基礎学力の定着を目指せるプロダクトです。
子供たちにとってはもちろん、マルチタスクに追われる先生方にとってもCBTの活用は有効です。CBTを活用し、子供たちの学ぶ力を効率良くはぐくみましょう。